データインカムの制度の導入が必要な理由

データインカム(Data Income: DI)の制度導入が必要な理由については、単なるデータ収集の枠を超えて、今後の社会や経済構造そのものを左右する重要な要素が含まれます。データインカムの制度が必要とされる主要な 7 つの理由について考察します。

1.社会規範のデータが必要であるため

AI の能力は毎年驚くべき速度で向上しており、近い将来、人間よりも知能が極めて高い「超知能」が出現すると予想されています。しかし、AI の知能がどのように高度化しても、人間の社会規範(法規範、倫理・道徳等)を理解するには、社会規範のデータが必要です。なぜなら、社会規範は数式やアルゴリズムだけでは導き出せず、国や地域や時代によっても異なります。その多様で複雑な規範を正確に理解するには、地道なデータ収集が不可欠だからです。

もし超知能が人類の社会規範を理解できなければ、その悪用を防ぎ、人類の滅亡を防ぐことは不可能になります。超知能を悪用する人はいずれ現れるでしょう。超知能が社会規範を正しく理解し、社会規範に反する指示を拒否できる仕組みが求められるのです。

この課題には特定の人の決定に偏らない莫大な量のデータが必要であり、データインカムを通じて「一般から民主的にデータを集める」というアプローチ以外で解決するのは極めて困難でしょう。

2.AIの潜在能力(ポテンシャル)を最大限に発揮するため

データは21世紀の石油と言われますが、21世紀の道路と捉えることもできます(データ道路構想)。現在、産業革命にたとえるなら、「自動車が発明されたが全国の道路が整備されていない」状態にあるといえます。自動車が発明されても、道路が舗装されていなければ、馬車より有用とはいえず、むしろ馬車の障害とみなされ、自動車の潜在能力は発揮できません。

AI革命の時代の「データ道路構想」は、産業革命の時代の「道路を舗装すれば自動車は馬車より有用である」という提案に相当します。産業革命の時代の多くの人は、「そんな非現実的な考えはあり得ない。全国の道路を舗装できるはずがない」と思うかもしれません。しかし、現実を見れば、日本の道路はほとんど舗装されています。データ道路構想によるデータの整備は、道路の舗装よりも、はるかに低コストで実現可能ですし、環境にも優しいものです。

しかし、現在も「データはインフラだが、民間が収集すべき」という固定観念が強く存在します。これでは、地域限定の私道(民間データ)が少数あるだけで、国道や県道(全国的インフラ)が欠如した状態になってしまい、自動車の潜在能力は全く発揮できません。データ道路構想を実現するには、データインカムの制度による、国、県、市、民間などによる総合的なデータのインフラ整備が必須です。

3.ベーシックインカムの導入促進と補完

超知能レベルのAIが悪用される危険が存在する以上、人類の存続を脅かす事態を防ぐため、「誰一人として社会から取り残されない社会」の実現が重要な課題となります。自暴自棄になって極端な行動(たとえば拡大自殺)を起こす人が超知能を悪用すれば、人類全体の存続が危ぶまれます。そのために、すべての人が良好な状態にある社会を目指さなければなりません。

そのためには、経済的な側面では、ベーシックインカム(BI)の導入が、社会的な側面では、社会規範を理解できる「民主的ローカルソブリンAI」を全国民に配布し、誰もがAIの支援を受けられる体制が必要でしょう。しかし、現時点でベーシックインカムを即座に導入するとなると、最大の壁となるのが「財源問題」です。

そこで、登場するのが、ベーシックインカムの導入を促進・補完する制度としての「データインカムの制度」です。

ベーシックインカムは、無償給付なので財源の問題がありますが、データインカムはデータが集められ、それがAIの性能と安全性の向上につながり、AIの生産力を高めることができます。AIの生産力の増大に役立つデータインカムの併用により、ベーシックインカムを早期に実現できるのです。

AIの生産力の増大こそが、ベーシックインカムの実現のカギとなります。この点から、「AI・BI・CI・DI構想」が提案されています。

4.生成AIと著作権の問題の終局的な解決

データインカムの制度は、著作権的にクリーンな巨大データベースを構築することで、「生成AIと著作権の問題の終局的解決」にも寄与します。

現在、生成AIと著作権の問題は解決されていません。この問題が終局的に解決されなければ、AI 開発者・利用者の萎縮効果を生み、同時に著作権者の保護も不十分になるというWin-Winでない状況が続くことになります。その結果、莫大な社会的損失が毎年発生し続けます。

また、現状では生成AIの出力を人間がチェックして利用することが前提になっています。しかし、AIエージェントや自律型AIの時代には、AIが自律的に動作するためには、その出力そのものが安全でなければなりません。この問題が終局的に解決しない場合、AIエージェントや自律型AIの利用を妨げ、長期的には何百兆円もの生産性向上を阻害してしまいます。

生成AIと著作権の問題の「終局的解決」には何百兆円もの価値があります。データインカムの制度は、制度設営コストはかかりますが、データインカムという対価により、著作権的にクリーンなデータを大規模に収集する仕組みを作ります。これが、生成AIと著作権の問題を「終局的に解決」する鍵となるのです。

5.データの共有・流通を促進するため

企業等において、データの共有・流通の促進は現在も大きな課題となっています。データインカムの制度は、データの知的財産制度でもあるので、非公開データの流通促進を含めた柔軟な制度設計が可能となります。

企業のニーズは多様であるため、データ主権に基づいて公開範囲を決めたり、AI学習の可否を選択するなど、幅広い選択肢を企業に提供できる制度設計が可能です。この点は、「データ共有・流通を阻害する要因と共有・流通を促進する制度設計」において議論されています。

6.日本のAI産業のキャッチアップ

日本のAI産業は、①AIのモデル、②計算資源(GPUなど)、③データのいずれでも遅れてしまいました。特に「③データ」に関しては、深刻な遅れがあります。日本語のデータ量は、英語、中国語などの主要言語と比較して少なく、日本国内でプラットフォーマーのように大規模なデータを収集できる企業も少ないのです。データインカムの制度を導入する以外に、③の遅れを取り戻すことは困難でしょう。

7.その他の理由

データインカムの制度は、他にも多くの導入の理由があります。たとえば、技術的失業で労働環境が悪化したときに、誰もが簡単に収入を得られるセーフティーネットの機能や、自分のデータがAI社会に反映されることによる生きがいの提供など、様々な導入の理由があります。

8.まとめ

以上、データインカム(DI)の制度の導入が必要な理由についてまとめました。

それぞれの理由はいずれも重要なものです。どれか1つの理由だけでも、データインカム(DI)の制度を導入する強い理由になるのではないでしょうか?

データインカムについてさらに詳しく知りたい方は、以下の情報をご参照ください。

データインカム(DI)について詳しく知りたい人のためのリンク

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