【研究紹介】データ共有・流通を阻害する要因と共有・流通を促進する制度設計

【研究紹介】
岡本義則「データ共有・流通を阻害する要因と共有・流通を促進する制度設計」,第1回データ協創研究会, No. SIG-DC-001-01. JSAI (2025)

本研究は、データ共有・流通を阻害する要因と共有・流通を促進する制度設計についての研究です。データの共有・流通を促進する知的財産制度に関して考察しています。

まず、本研究は、著作権法、不正競争防止法、個人情報保護法などの法律で保護されておらず、保護を契約に依存しているデータ(「契約依存データ」)に焦点を当て、データ共有・流通を阻害する要因を検討しています。具体的には、(1)データの特定の問題、(2)秘密保持契約の問題、(3)データ流出時の第三者に対する請求の困難性の問題について検討しています。

また、本研究は、契約だけに基づく「データの共有・流通促進」が政策として毎年検討されても、長期にわたってデータの共有・流通の促進ができないという袋小路に入ってしまうリスクを指摘しています。本研究は、「契約だけで」データの共有・流通の促進をすることが困難であることをわかりやすく示すものとして「データ流通限界仮説(Data Circulation Limitation Hypothesis)」を提案し、一定の仮定の下での証明を示しています。

次に、本研究は、データに権利を与えると流通を阻害するという感覚が錯覚であることについて、「著作権制度を廃止した場合にデータの流通が阻害される思考実験」を例として検討しています。著作権制度を廃止した場合、秘密保持契約なく販売すればコピーされてしまうため、著作物(例えば本やDVD)のデータは、書店やデパート等で販売できなくなってしまうことなどを検討しています。

本研究は、データに過剰な権利を付与することにはデメリットも存在するため、データの法的な保護として最低限必要な要素について考察しています。本研究は、阻害要因の検討を元に、(1)データの特定を出願番号などで容易に行えること、(2)データが秘密保持契約なしに取引可能であること、(3)契約当事者ではない第三者に対してもデータの権利を主張できること、を最低限必要な要素として検討しています。

本研究では、上記の要件を満たす制度として、データインカム(DI)の制度を検討し、データインカムの制度に基づいて、データの共有・流通を促進する制度設計について詳細に検討しています。制度設計の詳細は、下記の研究会資料をご参照いただけますと幸いです。

データの大規模な共有は、データ道路構想にも通じます。AIの性能向上と安全性の確保に極めて重要なAI学習用データの大規模な収集・共有・流通についても検討しています。

【興味のある方に】

本研究は、人工知能学会第二種研究会資料として、インターネット上において公開されています。

岡本義則「データ共有・流通を阻害する要因と共有・流通を促進する制度設計」,第1回データ協創研究会, No. SIG-DC-001-01. JSAI (2025)

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