データ流通限界仮説(Data Circulation Limitation Hypothesis)(用語解説)

データ流通限界仮説(Data Circulation Limitation Hypothesis)は、著作権法、不正競争防止法、個人情報保護法などの法律で保護されておらず、保護を契約に依存しているデータ(「契約依存データ」)について、データの流通に限界があるとする仮説です。

データ流通限界仮説は、「契約だけで」データの共有・流通の促進をすることが困難であることをわかりやすく示す仮説です。

契約依存データを、「契約だけ」で流通促進できるという幻想があると、契約だけに基づく「データの流通促進」が政策として毎年検討されても、長期にわたってデータの流通の促進ができないという袋小路に入ってしまうおそれがあります。

そこで、「契約だけで」データの共有・流通の促進をすることが困難であることをわかりやすく示すために、データ流通限界仮説(Data Circulation Limitation Hypothesis)を提案し、一定の仮定の下での証明を示すことは有用と思われます。

[データ流通限界仮説]
1.(仮定1)法律により保護されていないデータを、データ取引者との契約のみで保護・流通を図ろうとすると仮定する。データは、契約に基づき、相手方に提供される。
2.(仮定2)データが不可抗力や事故、内部不正など何らかの原因で、契約の相手方から第三者に流出するリスクが存在する。
3.(仮定3)第三者への流出が生じた場合、契約関係にない第三者に対する請求ができないリスクがある。さらに、第三者からデータが大規模に拡散するリスクもある。
4.(仮定4)データ提供者は、上記のリスクに心理的に不安を感じ、その不安から、データの共有・取引が抑制される。
5.(結論)上記の仮定1~4に基づくと、データを「契約のみ」で保護し、他に何らの制度を作らない場合、データの共有・取引が抑制され、流通・共有の促進には限界があることになる。(証明終わり)

この仮説を検討することにより、「契約だけで」データの共有・流通の促進することの困難が認識され、データの共有・流通を促進する制度設計についての議論が進展することが期待されます。

データ流通限界仮説と、データの共有・流通を促進する制度設計については、人工知能学会第二種研究会資料として、インターネット上において公開されています。

【研究紹介】データ共有・流通を阻害する要因と共有・流通を促進する制度設計

岡本義則「データ共有・流通を阻害する要因と共有・流通を促進する制度設計」,第1回データ協創研究会, No. SIG-DC-001-01. JSAI (2025)

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